2025年10月1日、外国で取得した運転免許を日本の免許に切り替える外免切替(がいめんきりかえ)制度が大きく変わりました。
制度が厳しくなったというニュースは多くの方が目にされたと思いますが、実際のところ、何がどれくらい変わったのでしょうか。
警察庁が2026年3月に公表した最新データを見ると、その「厳しさ」は数字としてはっきり表れています。本記事では、改正の中身、背景、そして現場への影響まで、できるだけわかりやすく整理していきます。
Contents
そもそも外免切替とは何か
外免切替とは、海外で取得した運転免許を日本の運転免許に切り替えることができる制度です。1994年5月の改正道路交通法施行以来運用されており、警察庁と都道府県公安委員会が管轄しています。
もともとこの制度は、海外在住の日本人が一時帰国する際や、外交官・技術専門職など一定期間日本で働く外国人を想定して設計されたものでした。観光客のような「一時的な訪問者」向けの制度ではなかったのです。
ところが運用が広がるなかで、本来の趣旨とは異なる利用が増加していきました。それが今回の制度改正につながっていきます。
厳格化で変わった3つのポイント
2025年10月1日施行の改正道路交通法施行規則によって変わったのは、大きく分けて次の3つです。
① 住所確認の厳格化 — 観光客は事実上申請不可に
改正前は、パスポートとホテルや知人宅を住居とした「一時滞在証明」の組み合わせでも申請が可能でした。これが今回の改正で禁止され、申請者の国籍にかかわらず住民票の写しの提出が原則必須となりました。
つまり、住民票を持たない観光ビザなどの短期滞在者は、外免切替を申請できなくなったということです。実質的に、本制度は中長期在留資格を持つ「居住外国人」向けの制度へと原点回帰したと言えます。
② 知識確認(学科試験)の大幅難化
学科試験の中身は、新規免許取得時とほぼ同等のレベルまで引き上げられました。
項目
改正前
改正後
形式
イラスト・○×形式
文章問題
問題数
10問
50問(5倍)
合格基準
7問正解(70%)
45問正解(90%)
イラスト問題は廃止され、文章を読んで判断する設問が中心になりました。問題数が5倍、許されるミスはわずか5問までという内容で、単なる暗記対策では合格が難しいレベルになっています。
③ 技能確認(実技試験)の採点厳格化
実技試験についても、日本の道路事情に即した安全性の高い内容へと見直されました。
具体的には、横断歩道の通過、踏切通過、坂道発進、周回カーブといった課題が追加されました。コース距離はそれまでの「おおむね1,200m」から「1,200m以上」に変更され、コースも3種類以上の設定が必要となっています。
採点面でも、これまでは「特別減点」(1回目のミスは見逃され、2回目に遡って減点される仕組み)だった項目の多くが、即減点の対象に変わりました。合図不履行や右左折方法違反なども、新規取得時と同様に厳しく採点されます。
数字で見る厳格化の効果
警察庁が2026年3月に公表したデータは、改正の影響を如実に示しています。
試験
2024年通年
2025年10〜12月
知識確認(筆記)
92.5%
42.8%
技能確認(実技)
30.4%
13.1%
知識確認は約54%減、技能確認は約57%減という大幅な低下です。「ほぼ全員合格」と揶揄されていた試験が、文字通り様変わりしたことがわかります。
都道府県別に見るとさらに厳しく、三重県では87人中合格者わずか3人、静岡県は合格率93%→38%、愛知県は94%→34.9%といったデータも報告されています。
なぜここまで厳格化されたのか
これだけ大幅な制度変更の引き金となったのが、2025年5月に相次いだ重大事故でした。
5月14日、埼玉県三郷市で中国籍の男性(42)が乗用車で下校中の小学生の列に突っ込み、男子児童4人にけがを負わせて逃走するひき逃げ事件が発生しました。男は事件直前まで飲酒しており、外免切替で日本の免許を取得していたことが判明しています。
その4日後の5月18日には、三重県亀山市の新名神高速道路で、ペルー国籍の男(34)が運転する乗用車が逆走し、避けようとした車を巻き込む事故が起きました。こちらも外免切替の利用者でした。
事故そのものに加え、外免切替の運用実態にも問題が指摘されていました。観光ビザで来日した外国人がホテルの住所を使って申請するケースや、中国のSNSで「攻略法」が広く共有されていたこと、さらにはジュネーブ条約に未加盟の国(中国やベトナムなど)の人が、日本の免許を取得することで国際免許を得るという、いわば”免許の逆輸入”ルートが定着しつつあったことなどです。
警察庁の調査では、15の国・地域のうち、日本のように観光客でも免許を切り替えられる国は他に存在しませんでした。多くの国では「3か月以上の滞在」や「住民登録」などを切替の条件としています。
外免切替の取得者数も急増していました。2015年の3万3,687人から、2024年には約7万5,905人へと、約10年で2.3倍以上に増えています。2024年の国籍別ではベトナムが約1万6,700人、中国が約1万5,000人で上位を占めていました。
警察庁が初めて公表した外国人ドライバーの事故統計によれば、2025年上半期の外国人運転手による死亡・重傷事故は全体の2%超で過去最高を記録。死亡事故22件、重傷事故236件にのぼりました。
試験が免除される29か国・地域は今回も維持
なお、すべての国の免許が同じ扱いというわけではありません。日本と同等水準の免許制度を持つとされる29か国・地域については、知識確認・技能確認ともに免除される特例が引き続き維持されています。
具体的には、アイスランド、アイルランド、米国(7州限定)、英国、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク、台湾です。米国インディアナ州については技能確認のみ免除されます。
現場で起きていること
制度改正後、各地の運転免許試験場では深刻な予約待ちが発生しています。東京都内の鮫洲運転免許試験場では、改正直後の2025年10月時点で予約が3か月先まで埋まり、「2025年内の切替は厳しい見通し」と報じられていました。
産業界への影響も小さくありません。物流・運送・製造業など、外国人ドライバーの採用が一般化していた業界では、これまでほぼ確実に取れる前提だった免許が、なかなか取れなくなりました。入社後に運転できない、別部署への配置転換が必要、採用そのものを取り消すといったトラブルが発生し始めています。
特に特定技能「自動車運送業」では日本の運転免許保有が必須要件となっており、国際免許では対応できません。外免切替ができなければ雇用目的そのものが成立しないケースもあり、企業の採用計画は根本的な見直しを迫られています。
一方、在日中国人の運転講師への取材によれば、合格率の数字ほど深刻ではないという見方もあります。試験内容は日本人の一発試験とほぼ同等で、事前に準備すれば十分クリアできるレベルだといいます。むしろ問題は予約の取りにくさで、1〜2か月待ちは珍しくなく、地方試験場へ流れる動きも見られるとのことです。
残された論点
制度の厳格化は概ね制度の正常化として受け止められている一方、いくつか議論の余地は残されています。
知識確認は21言語に対応している一方、日本の実際の道路標識は20言語で書かれているわけではありません。「日本語で標識を読めない人が日本の道路を走ることをどう考えるか」という根本的な問いには、まだ明確な答えが出されていません。
また、地方の試験場への申請者の流入や、コミュニティ内での攻略情報の共有など、運用面で対応すべき課題も残されています。
まとめ
今回の外免切替の厳格化で変わったのは、煎じ詰めれば次の3点です。
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観光客は申請不可に(住民票の提出が原則必須)
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学科試験が新規取得レベルに(問題数5倍、合格基準70%→90%)
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実技試験の採点が新規取得レベルに(課題追加、即減点項目の拡大)
その結果、合格率は学科で92.5%→42.8%、実技で30.4%→13.1%へと急落しました。
外免切替は、本来生活者としての外国人の交通参加を支える制度です。
今回の厳格化は、運用上の歪みを是正し、本来の制度趣旨に立ち返らせる健全化と位置づけられています。
日本で運転する以上、日本人と同じ基準を求めるという、ある意味では当然のルールに戻った、と言えるのかもしれません。
外国人を受け入れる側の企業や自治体にも、安全運転教育や採用計画の見直しなど、新たな対応が求められる時代になったと言えるでしょう。
主な参考情報
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警察庁「外免切替試験の実施状況」(2026年3月公表)
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警視庁「令和7年10月1日施行・改正道路交通法施行規則について」
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経済財政運営と改革の基本方針2025(骨太の方針)
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各都道府県警察(神奈川県警・大阪府警など)の外免切替案内

